4月11日-12日

在宅になって1週間経ってから日記をつけ始めただけに、意外と今日にたどりつかない。

 

4月11日

土曜日。自宅で仕事をしていると合間に家のことができるので土日の家事が激減する。のは我々のようなものだけで、お子さんのいるご家庭はほんとうに毎日大変だと思う。例えば我が家の上の階には育ち盛りのお子さん擁する家族が住んでおり、日々それなりに元気な音がする。過去に一度だけどうにも辛抱たまらず苦情を言ったことがありそれ以来かなり気をつけていただき本当にありがたいのだが、いまや非常時、予想通り彼の動きが徐々に激しくなっている。当然すぎる。私史上最高にわかる。おそらく君のその遣り場のない情熱の数千分の1程度しかわかっていないと思うが。というわけで何があろうと辛抱しようと心に決める。でも純粋な疑問としていっこだけ知りたい。君の家、我が家同様3DKのふすま全部取っ払って全面遊び場にしているな?

 

4月12日

新型コロナウイルス によって打撃を受けているミニシアターへの緊急支援プロジェクト、「Save The Cinema」に署名する。

www.change.org

ミニシアターは個人的に非常に大切な場所だ。昨年、アップリンク渋谷でようやく観ることができた「タレンタイム」は私のオールタイムベストだ。マレーシアのヤスミン・アフマド監督によるこの映画はDVD化されておらず、ミニシアターがあったからこそ観れた作品だ。

www.youtube.com 

私は昨年から念願の8mmフィルムでの映像制作に取り組んでいるのだが、これは渋谷のイメージフォーラムで開催されたワークショップに参加できたから始めることができたし、震災時に福島に戻っていた時は福島フォーラムにレイトショーを観に行くのが楽しみだった。こじんまりとしたスクリーンで、お互いひとりぼっちの観客3人くらいでお互いほどよく離れ暖かい飲み物を片手に映画を観て、映画からもらった何かをあれこれ考えながら車に乗って家に帰る時間は、翌日からまた仕事に冷静に取り組んでいくためにも重要な時間だった。ちなみに現在秋田を除く東北5県と那須塩原にあるフォーラムは日本で初めて市民出資で生まれたシネマネットワークだ。地元の福島フォーラムは98年に近くに外資系のシネコンができて一時経営難に陥ったが、市民が存続する会を作って出資も行い危機を脱した歴史があり、私はこのことで地元をとても誇らしく思っている。今回もなんとか乗り切ってもらえれば嬉しいのだけど...

4月8日-10日

思ったより多くの人の目に触れているようで恥ずかしい。この恥ずかしさを受け入れ何日耐えられるかこの日記。

 

4月8日

さて、自宅勤務になった時点で私は年度末で多忙だったこととおそらく非常時のストレスで通常37℃に届こうかという体温がこの1ヶ月徐々に下がり続け36℃を切るかというところまできていた。体温が1℃下がると免疫が30%下がるとも言われているので、昨日までなかなかにスリリングだった。感染の有無については2週間程度様子を見る必要があるが、感覚的には逃げ切った感じだ。ありがたい。とにかく休養しろと同居している恋人の人に言われたので、ひとまず体温がある程度上がるまで仕事以外の時間は横になることにする。

 

4月9日

今日も仕事以外は横になっている。横になりつつ、とにかく伝染病の基本的な知識が不足しているのでいろいろ調べることにする。違法なので言いづらいが、YouTubeに上がっている過去の特集番組が使える。違法なので言いづらいが、その中でも3年前に放送されたらしい「NHKスペシャル【MEGA CRISIS 巨大危機3 ウイルス大感染時代】」が入門として非常に理解しやすく、そして非常に予言的だ。違法なのでここにリンク貼りづらいけど。この番組に登場している研究者たちが今回のクラスター対策班のメンバーに名を連ねているようだ。世間の矢面に立つ覚悟をした研究者を私はいつも尊敬する。科学は常に「その時点でわかっている(もしくはその時点でそう思われる)こと」しかない。特にこの未知のウイルスには当然だけど専門家がいない。わかっていることですら非常に少ない。こんなにもわからないのに人に何かを発信することは研究者にとって非常に勇気がいることだと思う。私も研究者としてではないが震災の復興事業で故郷の福島に戻って働いていた折に放射性物質について説明する機会が結構あり、どんなに勉強しても自分が間違ったことを言っていないか古い知識ではないのかといつもものすごく怖かった。研究が進んで、あの時言ったことと内容が変わっていることもあると思う。

 

4月10日

今日も仕事以外は横になっている。伝染病は災害で、だからいまは災害時だ。何かできることがあればしたいけど、今回は私のような人間は家にいて感染しないのが最も世の役に立つだろうし、家に居てできることで考えてみる。

 

まず私が個人的に強く願っているのは医療従事者の方の安全確保だ。それと新型コロナウイルスが根本的に解決する方法であるワクチン開発の成功。ワクチンが開発され量産できるようになり、あまねく人に接種できるようにならないとどうにも解決しない。過去に農薬開発に携わっていた経験から言えるのは「薬やワクチンを完成させるまでには膨大な人件費と資材費と時間がかかる」で、さらに言うと「時間は人件費と資材費が潤沢であれば短縮できることがある」だ。分野は違うが、例えば予想を超える多額の寄付によってサグラダファミリアの工期が短くなっているみたいな感じ。

 

以上を踏まえ、私はまずここに毎月給与日にほんの少しだがお金を託すことにした。

readyfor.jp

ちょっとやりたいことがあって副業禁止規定を気にしなくて良いように昨年正規から非正規に雇用を変えたため自分の生活がこの先どうなるか全くわからないけど、わかってるうちは頑張って出したい。

自宅勤務になったので日記を書いてみる

先日「今はSNSではなくインターネット日記の言葉が状況に合う」というつぶやきをツイッターで見てなるほどなと思っていた矢先に、緊急事態宣言の発令に伴って私は運良く自宅勤務になった。ので、数年前にアカウントだけ作って何も書いていなかったブログに日記を書いてみることにした。期間はひとまず緊急事態宣言終了まで。

 

私は千葉県内から都内に日々電車通勤をしているごく普通の会社員だ。唐突だが体があまり丈夫でない。どういう感じで丈夫でないかと言うと、「疲労がたまると体内のリンパ球の数が急激に減る→免疫が極端に下がる→ウイルスや菌に感染しやすくなる」という感じのやつで、過去に数回、仕事で過労状態に陥ったついでにその辺のどうでもいいウイルスにひとりで勝手に感染し入院した実績を持っている。

 

控えめに言って今回まあまあやばい。

 

どうでもいい話だが私は樹木病理を専門としており、動物の病理とはもちろん全く違うもののウイルスのサイズ感や作用機作に若干の素養がある。新型コロナウイルスの情報が世界を駆け巡り出した当初まず思ったのが「ウイルスは小さい。飛沫はある程度でかいだろうから家庭用マスクを感染者がすることで拡散を防ぐことには効果がありそうだけど、感染者じゃない人間がウイルスから身を守るにはほとんど意味ないだろ」であった。

 

まずは手っ取り早いところで、国立感染症研究所公式ホームページなど目ぼしいサイトで新型コロナウイルスの基礎情報を確認する。新型コロナウイルスの大きさは他のコロナウイルスと同様に0.1μm程度だ。ちなみにスギ花粉は30μm程度だ。

 

次に感染経路などについて、これまでにリリースされてるいくつかの論文を読む。新型コロナウイルスは他のコロナウイルスと同様、飛沫および接触感染することがわかっている。

 

続いて一般的な病理関連の知識を漁る。人間の咳くしゃみによる飛沫の大きさは概ね3〜5μm、レンジで言うと1~100μm位のようだけど、エアロゾルと呼ばれるもっと小さいサイズの飛沫核が浮遊することもあるようだ。そういやウイルスは基本乾燥すると失活するはずだけど、飛沫だと水分につつまれているわけで、どのくらいで乾燥すんのかな。うーん、どんなにでかい飛沫でも、だいたい2m位飛ぶまでに乾燥するらしい。時間的には1秒未満かなあ(←これはあとあと出た新型コロナウイルスの論文で30分くらい浮遊する報告も出ているので当時の情報)。人と距離をとるのが大事そうだ。

 

話は逸れたがそれでマスクだ。家庭用のマスクの種類は現在、花粉対策用、風邪/ウイルス対策用、PM2.5対策用に大別される。それとN95などの、いわゆる防塵マスクがある。これらのマスクについて軽く調べてみるとちょうど良い資料が見つかる。

 

環境省HP 全国マスク工業会提供 不織布マスクの性能と使用時の注意

https://www.env.go.jp/air/osen/pm/info/cic/attach/briefing_h25-mat04.pdf

 

花粉対策用→約30μm以上の粒子をカットするフィルタを採用 

風邪/ウイルス対策用→BFE(約3μm)、VFE(約1.7μm)の試験を行って99%までフィルタ捕集できたやつ

PM2.5対策用→PFE(約0.1μm)の試験を行って99%までフィルタ捕集できたやつ

 

これを見るとウイルスに対する拿捕効果があるのはPM2.5対策用マスクとN95マスクだ。ただPM2.5対策用マスクでも一般的にドラッグストアで販売されているマスクはみな顔に密着装着できるものではないから、隙間から普通にウイルスが入る。なるほど、安心したくてマスクを着けることは意味があると思いたい人もいるようだが、これでは「着けないよりはまし」としか言いようがない。他方、飛沫の拡散予防については飛沫の大きさから考えると、どのマスクでも感染者がつけることには十分な意味があるだろう。ものによっては9割抑えたというデータもあった。

 

ちなみにN95は以前就いていた仕事で使用していたことがあるが、緊密なだけに空気の流れが制限されて着けているだけでまあまあ息苦しい。日常生活での使用は全然現実的じゃない。心肺能力を上げたい人にはいいかもしれない。でもいまは世界に存在するもしくはこれから生産されるN95または同等レベルのスペックを持つマスクは全て、まじで全て医療従事者の皆さんに差し上げてほしい。

 

この辺りまで調べたところでもう、東京で外に働きにでている以上新型コロナウイルスに感染するのはしょうがねえわ。と、あきらめの気持ちで最早落ち着いてきた。知識は人を冷静にさせる。

 

私は毎日、日本一混雑するらしい電車に乗って通勤し、100人弱がしきりのない1室で机を並べるオフィスで仕事をしている。昼食や仕事帰りには、ウイルスが付着しそして留まりやすいビニール製やら何やらに包まれた、先に誰が触ったかわからない食料品などを買う。そして感染していない人間にとってマスクは「着けないよりはまし」でしかない。

 

手洗いうがい消毒をし、電車でつり革に絶対掴まらない(安全上は問題ありすぎ)という対策は取っているが「接触しない」には早くも限界が見える。人と人との距離が物理的に遠くならない限り無理だ。無症状キャリアの可能性が報告されているから、自分が感染している前提で咳エチケットはちゃんとしよう。あとはしょうがねえ。

 

ここまで考えたのが3月はじめ。

 

そこから非常事態宣言が出て自宅待機になるまでの1ヶ月は精神的になかなかだった。しょうがねえと思っているのは事実だが、そこは人間、一枚岩ではないのでそれなりにつらい。

まず電車に乗ると普通に毎日満員電車なうえに、みな疑心暗鬼に陥っているので最高に雰囲気が悪い。と思えばマスクをしている人の中でマスクを過信している勢が結構いて、接触感染のおそれのある行動をばんばん取っているのが目に入ってハラハラする。あと話すときにマスクを外す人が結構いる。いやいや逆だよである。知識は時に無駄な心労を増やす。

 

まあでも年度末だし食っていかないといけないしで毎日通勤し、これはいよいよ免疫下がりそうだわとなっていたある日、非常事態宣言が出て私は運良く自宅勤務を言い渡された。

 

長くなっちゃったな。こんなの読む人いんのかな。