自宅勤務になったので日記を書いてみる

先日「今はSNSではなくインターネット日記の言葉が状況に合う」というつぶやきをツイッターで見てなるほどなと思っていた矢先に、緊急事態宣言の発令に伴って私は運良く自宅勤務になった。ので、数年前にアカウントだけ作って何も書いていなかったブログに日記を書いてみることにした。期間はひとまず緊急事態宣言終了まで。

 

私は千葉県内から都内に日々電車通勤をしているごく普通の会社員だ。唐突だが体があまり丈夫でない。どういう感じで丈夫でないかと言うと、「疲労がたまると体内のリンパ球の数が急激に減る→免疫が極端に下がる→ウイルスや菌に感染しやすくなる」という感じのやつで、過去に数回、仕事で過労状態に陥ったついでにその辺のどうでもいいウイルスにひとりで勝手に感染し入院した実績を持っている。

 

控えめに言って今回まあまあやばい。

 

どうでもいい話だが私は樹木病理を専門としており、動物の病理とはもちろん全く違うもののウイルスのサイズ感や作用機作に若干の素養がある。新型コロナウイルスの情報が世界を駆け巡り出した当初まず思ったのが「ウイルスは小さい。飛沫はある程度でかいだろうから家庭用マスクを感染者がすることで拡散を防ぐことには効果がありそうだけど、感染者じゃない人間がウイルスから身を守るにはほとんど意味ないだろ」であった。

 

まずは手っ取り早いところで、国立感染症研究所公式ホームページなど目ぼしいサイトで新型コロナウイルスの基礎情報を確認する。新型コロナウイルスの大きさは他のコロナウイルスと同様に0.1μm程度だ。ちなみにスギ花粉は30μm程度だ。

 

次に感染経路などについて、これまでにリリースされてるいくつかの論文を読む。新型コロナウイルスは他のコロナウイルスと同様、飛沫および接触感染することがわかっている。

 

続いて一般的な病理関連の知識を漁る。人間の咳くしゃみによる飛沫の大きさは概ね3〜5μm、レンジで言うと1~100μm位のようだけど、エアロゾルと呼ばれるもっと小さいサイズの飛沫核が浮遊することもあるようだ。そういやウイルスは基本乾燥すると失活するはずだけど、飛沫だと水分につつまれているわけで、どのくらいで乾燥すんのかな。うーん、どんなにでかい飛沫でも、だいたい2m位飛ぶまでに乾燥するらしい。時間的には1秒未満かなあ(←これはあとあと出た新型コロナウイルスの論文で30分くらい浮遊する報告も出ているので当時の情報)。人と距離をとるのが大事そうだ。

 

話は逸れたがそれでマスクだ。家庭用のマスクの種類は現在、花粉対策用、風邪/ウイルス対策用、PM2.5対策用に大別される。それとN95などの、いわゆる防塵マスクがある。これらのマスクについて軽く調べてみるとちょうど良い資料が見つかる。

 

環境省HP 全国マスク工業会提供 不織布マスクの性能と使用時の注意

https://www.env.go.jp/air/osen/pm/info/cic/attach/briefing_h25-mat04.pdf

 

花粉対策用→約30μm以上の粒子をカットするフィルタを採用 

風邪/ウイルス対策用→BFE(約3μm)、VFE(約1.7μm)の試験を行って99%までフィルタ捕集できたやつ

PM2.5対策用→PFE(約0.1μm)の試験を行って99%までフィルタ捕集できたやつ

 

これを見るとウイルスに対する拿捕効果があるのはPM2.5対策用マスクとN95マスクだ。ただPM2.5対策用マスクでも一般的にドラッグストアで販売されているマスクはみな顔に密着装着できるものではないから、隙間から普通にウイルスが入る。なるほど、安心したくてマスクを着けることは意味があると思いたい人もいるようだが、これでは「着けないよりはまし」としか言いようがない。他方、飛沫の拡散予防については飛沫の大きさから考えると、どのマスクでも感染者がつけることには十分な意味があるだろう。ものによっては9割抑えたというデータもあった。

 

ちなみにN95は以前就いていた仕事で使用していたことがあるが、緊密なだけに空気の流れが制限されて着けているだけでまあまあ息苦しい。日常生活での使用は全然現実的じゃない。心肺能力を上げたい人にはいいかもしれない。でもいまは世界に存在するもしくはこれから生産されるN95または同等レベルのスペックを持つマスクは全て、まじで全て医療従事者の皆さんに差し上げてほしい。

 

この辺りまで調べたところでもう、東京で外に働きにでている以上新型コロナウイルスに感染するのはしょうがねえわ。と、あきらめの気持ちで最早落ち着いてきた。知識は人を冷静にさせる。

 

私は毎日、日本一混雑するらしい電車に乗って通勤し、100人弱がしきりのない1室で机を並べるオフィスで仕事をしている。昼食や仕事帰りには、ウイルスが付着しそして留まりやすいビニール製やら何やらに包まれた、先に誰が触ったかわからない食料品などを買う。そして感染していない人間にとってマスクは「着けないよりはまし」でしかない。

 

手洗いうがい消毒をし、電車でつり革に絶対掴まらない(安全上は問題ありすぎ)という対策は取っているが「接触しない」には早くも限界が見える。人と人との距離が物理的に遠くならない限り無理だ。無症状キャリアの可能性が報告されているから、自分が感染している前提で咳エチケットはちゃんとしよう。あとはしょうがねえ。

 

ここまで考えたのが3月はじめ。

 

そこから非常事態宣言が出て自宅待機になるまでの1ヶ月は精神的になかなかだった。しょうがねえと思っているのは事実だが、そこは人間、一枚岩ではないのでそれなりにつらい。

まず電車に乗ると普通に毎日満員電車なうえに、みな疑心暗鬼に陥っているので最高に雰囲気が悪い。と思えばマスクをしている人の中でマスクを過信している勢が結構いて、接触感染のおそれのある行動をばんばん取っているのが目に入ってハラハラする。あと話すときにマスクを外す人が結構いる。いやいや逆だよである。知識は時に無駄な心労を増やす。

 

まあでも年度末だし食っていかないといけないしで毎日通勤し、これはいよいよ免疫下がりそうだわとなっていたある日、非常事態宣言が出て私は運良く自宅勤務を言い渡された。

 

長くなっちゃったな。こんなの読む人いんのかな。